2015年10月16日、立教大学太刀川記念館での環境社会学会例会(主催・立教大学ESD研究所、共催・環境社会学会、立教大学社会学部関礼子ゼミナール、後援・新潟県)から。
構成/中川大介(人と水研究会共同代表、北海道新聞記者)
世にも奇妙なダムというべきだろう。ダム自体にではなく、コンクリート堤体の真ん中に穿たれた虚空(=スリット)に存在価値があるというのだから……
羊蹄山北麓の丘陵地帯を蛇行しながら流れる倶登山川。流域を覆っていた森はとうに皆伐されて広大な農地に変貌し、この落差工のまわりもぎりぎりまで畑が迫って、風景は人工的だ。だからこの魚道が絶滅危惧種イトウ(サケ科)のために造られたと言っても信じてもらえないのではないか……
もくじ
「手づくり魚道」への旅 ……………………………… 中川大介
ウヲサカノボリ、エガヲヒロガル …………………… 平田剛士
三郎川手づくり魚道の被災から考えたこと ………… 岩瀬晴夫
手づくり魚道はたまに壊れてこそ意味を持つ ……… 河原淳
浜中の手づくり魚道〝見試し〟から考える ………… 岩瀬晴夫
地元をフォローするのは「よそ者」の義務なのだ … 沼田雄一
「手づくり魚道」から考える ………………………… 中川大介
鳥越皓之さんは、水と人、水と地域社会のかかわりについて深く考察されてきた環境社会学者である。編者代表を務められた「里川の可能性 利水・治水・守水を共有する」(新曜社、2006)をはじめとする著書に、私は心を突き動かされてきた。鳥越さんが荒川康さん(兵庫県立大学)とともに執筆されたこの本の第1章には、このように書かれている。
「わたしたちは次のような選択をした。すなわち、自分たちの生活を川から遠ざけたのだ。そのうえ、洪水の危険性や衛生面の問題などの河川が抱え込んでいた負の側面に対して、集落などのコミュニティが緊張感をもって対応してきた歴史を捨てて……
私は来年で80歳になります。ですから今日は新しい技術や知識のことは一切お話しできません(笑)。そうではなくて、当たり前のことを当たり前に積み重ねてきた先に、将来へのどんな展望が見えるのか、みなさんと一緒に考えてみたいと思って、きょうこの会場にやってきました。
私と川とのつきあいは、渓流魚の研究から始まっています。その後、北海道大学の苫小牧研究林¹で責任者(林長)のポストに身を置きまして、そこで川と森林のつながりに関する研究を幅広く行なう研究体制を作ることに長い時間を費やしてきたのです。研究林の中には川が1本、ほんの小川ですけれど流れていて……
関連リンク 応用生態工学会