人と水研究会とは

人と水研究会共同代表
中川大介/平田剛士

2013年1月、札幌市で設立。ジャーナリスト、デザイナー、研究者、コンサルタント、NPO職員、行政職員らが参加。会報を発行。

 

共同代表 中川大介(北海道新聞記者)

     平田剛士(フリーランス記者)

 

「人と水研究会」発足にあたり

 

人と水研究会共同代表 中川 大介

 

 私たちが暮らす社会のこれからのありようを考えるとき、「人と水」のかかわりは大きな意味を持つテーマです。治水や利水は、はるかな昔から「政=まつりごと」の重要なテーマでした。水の恵みをいかに巧みに利用するか、そして水がもたらす脅威をいかにして軽減するか、住民も、為政者も心を砕いてきました。水に恵まれ、洪水や津波も多い日本で、人々はそれぞれの地域において「水とつきあう」「川や海の自然とつきあう」文化を育み、これが地域の自治の基盤ともなってきました。

 

 しかし、近代の社会の中で治水や利水は行政機関が責任を持つべきものと位置づけられ、中央集権政府が高度な技術を駆使して水を治めるようになったことにより、私たちは「安心」や「便利さ」を手に入れた半面、「地域の水や自然とのかかわり」「水とのつきあいの中に生まれる人同士のかかわり」を失ってきたように見えます。

 

 環境への大きな負荷、地方の疲弊と都市との格差拡大、地域社会のつながりや文化の多様性の喪失、人間の孤立化など、合理性や効率性に傾斜しすぎた近代の社会システムの問題点が明らかになり、東日本大震災や原発事故によってそれらが決定的に露呈した今、私たちは新しい社会のありようを深く考えねばならない状況に直面しています。

 

 その際、私たちが水とどのようにかかわりながら暮らしていくかを考えることは、新しい時代にふさわしい社会システムや自治の在り方、すなわち「持続可能な社会」のありようを構想する一助になることでしょう。

 

「豊かで、持続可能な社会」へ歩を進めていくために、「人と水」について考える会を立ち上げ、各地域で問題意識を共有する人々の取り組みに学びながら、これからの社会のありようについて考え、提言していこうと思います。

 

2013年7月15日